
長野県は、パンデミックからの観光需要回復において、際立った成長を遂げています。最新データによると、外国人延べ宿泊者数は2023年で95万人泊を超え、2024年速報値では219万人泊に達しました。主要な訪問国は台湾、オーストラリア、香港であり、自然、ウィンタースポーツ、温泉、文化体験など、長野ならではの資源が評価されています。本記事では、これらの市場ごとの動向、旅行動機、行動様式を分析し、今後の観光戦略について展望を示します。
1. 長野県のインバウンド観光の現状
長野県は、北アルプスの自然、善光寺などの文化資産、白馬村を代表とするスキーリゾートを有する、日本屈指の観光県です。2023年の外国人延べ宿泊者数は951,217人泊(前年比607.4%増)、2024年速報値では219万人泊(前年比146.4%増)に達し、観光市場は回復以上の成長段階に入りました。
2. 外国人訪問者の国別動向
2023年の国別ランキングは以下の通りです:
- 1位:台湾(175,142人泊、構成比18.4%)
- 2位:オーストラリア(144,152人泊、15.2%)
- 3位:香港(95,998人泊、10.1%)
これら3カ国が全体の4割以上を占め、長野県におけるアジア・オセアニア市場の存在感が際立っています。特に台湾は2019年から再び首位に返り咲き、香港も安定した回復を示しています。
3. 主要国別の旅行動機と特徴
台湾
季節ごとにハイキング・スキー・温泉を楽しむ傾向があり、長野県を周遊の一部として訪れるケースが多く、リピーター化が進んでいます。
オーストラリア
白馬でのスキー目的が中心で、12月〜1月にかけての長期滞在が多く、1人あたりの消費額が高い高付加価値市場です。スキー以外の冬のアクティビティへの関心も高まっています。
香港
温泉、文化、食への関心が高く、デジタルプラットフォーム(YouTubeやSNS)を活用した情報収集が一般的です。
4. 長野県の観光資源と体験価値

- ウィンタースポーツ:白馬村は外国人比率50%を超え、国際的スキーリゾートとしての地位を確立。
- 自然景観:上高地、白糸の滝、大王わさび農場などが人気。
- 文化・歴史:善光寺、松本城、中山道宿場町、伝統工芸など深い体験が可能。
- 温泉・ウェルネス:戸倉上山田温泉などが個人旅行者に人気。スノーモンキーで有名な地獄谷も注目。
- 食文化:信州そば、地元の日本酒、郷土料理を活用した体験型観光が重要に。
5. 課題と戦略的チャンス
主な課題:
- 欧米での知名度が依然として低い
- SNSやプラットフォームが国ごとに異なり情報発信が複雑
- スキーへの季節依存が強い
- 若年層の訪問率が低く、施設や交通への満足度にギャップ
主な機会:
- スポーツツーリズム(“する”体験型)を推進
- 小布施や千曲のような持続可能な観光地ブランドの活用
- 北陸新幹線延伸などによるアクセス改善
- オフシーズン向けのアクティビティ強化
6. 提言:持続可能な成長に向けて
- ターゲット別のマーケティング強化:
- 豪州には冬とコンドミニアム型施設の訴求を強化
- 台湾・香港には文化・温泉・食体験を軸とするルート提案
- 欧米向けには精神的・歴史的体験を英語で丁寧に発信
- 体験の多様化:
- 季節別体験(春の桜、夏の避暑、秋の紅葉)を通年でプロモーション
- 地元食材を使った料理教室や地酒ツアーを強化
- 多言語インフラの整備:
- 案内板や交通機関、観光施設での多言語化
- 若者や家族層に適した観光体験・施設の充実
- 持続可能な観光地としてのブランディング:
- 環境配慮、地域との連携、文化保全を前面に出したプロモーション
結論
長野県の観光市場は、回復から成長への転換点を迎えています。ウィンタースポーツに加え、四季を通じた自然、食、文化、ウェルネスの魅力を戦略的に活かすことで、多様な国からの訪問者に対応できる持続可能な国際観光地としての地位を確立できます。そのためには、官民一体でのインフラ整備、マーケティング強化、商品開発が鍵となります。